2020年3月5日木曜日

物件購入プロセス④:聞かないと教えて貰えない、盲点になりがちな物件情報10項目

前回は、物件情報の中にも、そのまま額面通り受け取っても良い情報とそうではない情報があること、また、額面通り受け取ってはいけない情報についてはどのように精査をすることが出来るのか、を記載しました。


今回は、マイソクや物件概要などにはあまり載っておらず、購入判断の前に聞くべきだと思う、盲点になりがちな物件情報を集め、説明を致します。

以下に列挙する情報のうち、一部は重要事項説明書や購入直前に説明があるものなのですが、購入に至るもっと手前のところで把握が出来た方が、正しい判断を行えるため、情報として、万が一漏れていたら、聞いておくべきということで取り上げました。

新築・中古、一棟・区分問わずに聞くべき内容として、記載致します。

こちらから聞かないといけない物件情報の盲点とは?

①管理会社の継続条件について

どの手法であれ、多い話ですが、建物の管理契約が一定の長期契約となっているケースがあります。購入後に解約できないと賃貸経営の自由度が減りますので、管理会社の継続が必須かどうか、何年契約になっているか、確認をした方が良いと思います。※もちろん、うまく行っている場合含め、管理会社とは長く付き合った方が利点は多いと思います。

②その他(清掃や消防設備点検、定額リフォーム等)の継続条件について

一棟物だと清掃や消防設備点検があらかじめ決められていたり、区分マンションでも定額リフォームなどをルール化したり、業者指定しているケースが時折ありますので、ここも継続が必須かどうか、自分で業者を探すことが可能かどうかを確認出来ると良いと思います。※ここも、指定業者が決まっていることが一概に悪いことではありませんが、業者選定の自由度やPDCAを考えると自由な方が賃貸経営はしやすいと思います。

③預かり敷金の有無とあった場合の扱い

中古物件で会話になるケースが多いです。預かり敷金があった場合に、それがいくらあるのか、販売価格に預かり敷金が含まれているのか、含まれていないのか。確認をする必要があります。大規模物件だと預かり敷金だけで数百万となっていることもあります。

④プロパンガス業者との契約の条件

ここは一棟物件に適用される盲点です。プロパンガス業者との契約が何年契約なのか、解除は可能なのかどうなのか、確認をする必要があります。

一棟物件の建築とプロパンガス業者には切っても切れない縁があり、ここは別の機会に説明を致します。ざっくりと説明するとプロパンガス業者が設備(給湯やエアコン等)を負担する代わりに建築会社がプロパンガス会社と長期(10~15年が多い)契約を締結している慣習があります。

⑤サブリース契約の有無や条件について

サブリース契約をしている場合には、現状の賃料がいつまで保証されているのか(次回の賃料改定タイミングはいつなのか)、解約は可能かどうか、解約時のペナルティはあるかどうか、など確認をする必要があります。購入直後に賃料改定があり、サブリース契約を解除しようとすると高額なペナルティがかかった。みたいなことにならないように注意してください。これは、新築でも中古でも確認が必要な部分です。

⑤固定資産税・都市計画税

新築であれば、確定の数字が不明なのは問題ありません。しかし、中古物件であれば購入意思を固める前に把握をしておけると良いと思います。

⑥物件周辺の高低差情報

物件から最寄り駅までの道など、高低差は地図からは読み取れませんので、念のため確認が必要です。現地にいけば、この辺りの認識の齟齬は無くせると思います。

⑦客付時のADの有無と、あった場合のADが何か月分かの把握

ここは中級者でも盲点になりがちな情報ですが、私は極めて重要だと考えている把握必須事項です。賃貸の客付時にはADと呼ばれる成功報酬を支払うケースがあります。(築古や、やや郊外・地方に多いです。都心の区分マンションなどではADはあまり設定されません。)

地方の築古などの場合、また、一都四県でも競合密集エリアなどではAD3か月(家賃の3か月分を賃貸募集の成功報酬で支払う)などもあり得ます。このADを把握せずにシミュレーションをかけると、地方の築古などではシミュレーションと実態の乖離が大きくなりますので、ADの有無とあった場合に何か月分を使ったか、は確実に確認をすべきだと思います。ADではなく、他の名目で成功報酬の支払いを行うケースもありますので、ADを聞きつつAD以外にも支払いがあるものはありますか?と聞いても良いと思います。

⑧土地価格と建物価格の設定

土地の価格と建物の価格については、聞かなくても教えてもらえる部分ではありますが、交渉余地があることをご存じない方は多いかと思います。売る側は、建物が安く、土地が高い方が望ましいことが多いです(特に法人の場合)。また、買う側は、建物が高く、土地が安い方が望ましいことが多いです(減価償却や、消費税還付)。

そのため、私は毎回建物価格を出来るだけ挙げて貰うように売り主と交渉をしましたが、売り主と交渉をする以外にも、売買契約書に内訳を書かない(消費税金額も書かない)という方法もあります。この場合は、土地と建物の金額を固定資産税評価額で按分しますので、価格の調整をすることが難しいときには、内訳を書かない(消費税金額も書かない)という交渉を売り主とするのも良いかと思います。

⑨修繕積立金の積立金額

こちらは中古区分マンションの際に最も重要になってくる項目です。修繕積立金がいくらくらいあるのか、購入直前にはもちろん知ることが出来るのですが、買い付けなどを入れる前のタイミングでこの情報を把握しておけると良いと思います。1部屋あたり100万円を超えていたり、物件価格に対して5%以上たまっていたりすると、私は比較的安心して買うケースが多いです。もちろん、大規模修繕工事直後などは修繕積立金が0に近かったり、数百、数千万円の借り入れがある場合などもあります。借入などがあっても、適正な修繕積立金を取得出来ていれば、そこまで心配する必要はありません。

⑩最寄りの交通機関の時刻表情報

ここは、特に郊外や地方のバス便などの物件の際に注意をした方が良いと思っている事項です。「新幹線駅xxまでバス便15分。バス停まで2分」などのうたい文句を見ると、良さそうな物件に見える方もいると思います。しかし、このバスが1時間に6本くるのか、1時間に1本しか来ないのか、で、この物件の利便性には大きな差がありますので、このあたりも目を配れると良いと思います。もちろん、駐車場が戸数以上あったりする車社会のエリアでは問題ありませんし、そもそもバスのルート変更やルート廃止なども起こり得る話ですので、1時間に6本バスが来るのでこの物件を買っても良い、という判断もやや早計ではあります。

物件購入プロセス、次回は⑤以降について説明をして参ります。

物件購入プロセス
 ①セミナーに参加して物件情報を貰う
 ②物件情報サイトで物件選び
 ③物件情報の中で疑って見るべき箇所とは?
 ④聞かないと教えて貰えない、盲点になりがちな物件情報10項目

 ⑤以降も順次、説明記事をアップ致します。

※本記事は、2020年3月時点での記事です。 本ブログでは、環境変化に対応するため全記事を定期的に更新しています。

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2020年3月4日水曜日

書評:不動産投資専門税理士が明かす 金持ち大家さんが買う物件 買わない物件

3冊目の書評です。1,2冊目はよくある全般本ですが、本著は税理士が書いていることもあり、少し税務の面に強い全般本、という印象です。

①基本情報
  タイトル:不動産投資専門税理士が明かす 金持ち大家さんが買う物件 買わない物件
 出版社:双葉社
 発行日:2017年1月
 価格:1,030円
 ページ数:184
 著者:稲垣 浩之
不動産投資専門税理士が明かす 金持ち大家さんが買う物件 買わない物件
②著者の立場
 著者は不動産投資専門の税理士であり、コンサルタントです。1999年に税理士登録、2002年より稲垣浩之税理士事務所を開業しています。私も不動産セミナーに参加をする中で、稲垣先生のお話を何回か聞いたことがありますが、歯切れも良く話の分かりやすい先生だった印象があります。
 これまで2,500人のサラリーマン大家向けに「正しい不動産投資」の啓蒙活動をしており、不動産投資に関する多くの情報を持っておられます。著書の中でも、様々な不動産投資のパターンを分析しているパートなどもあります。

③書評

 先にお伝えすると、私の感想としてはとても優れた本だと思います。大きく3つの理由があります。

 1つ目は、税理士という税金やお金の計算のプロフェッショナルですので、どんぶり勘定ではなく、正確に投資(というかビジネスとして)儲かる・儲からない、の視点で物事を見ています。また、税引き後の最終的な儲けを考えておられます。

 2つ目は、ご自身の経験のみならず、2,500人のサラリーマン大家さんの情報をデータとして持ち合わせており、

 3つ目は、第1章の中で「何のために不動産投資するかが明確な人」を金持ち大家さん成功の条件に入れている通りで、手段先行ではなく、目的・目標ありきで物事を考えています。そのため、あらゆる説明が理にかなっており、また、変な偏りがありません。サラリーマン大家さんの事例紹介コーナーがありますが、規模や利回りや手法では評価をしておらず、目的・目標に向かって着実に向かっているかどうか、で評価をしており、極めて好感が持てました。

以下、全体の流れです。

 第1章 不動産投資の「いま」を知らないと「金持ち大家さん」にはなれない
 第2章 「金持ち大家さん」が買う物件買わない物件
 第3章 「金持ち大家さん」の不動産業者との付き合い方
 第4章 「金持ち大家さん」は知っている、銀行のホンネ
 第5章 「金持ち大家さん」の上手な税金との付き合い方

 第1章は、サラリーマン大家さんにアンケート調査をとった結果を分かりやすく記述しています。35歳~48歳で全体の6割を占めている、年収は500~1500万円の方が中心、個人所有が6割、不動産投資歴は3年未満が多い、物件総額は1億円未満が多い、ローンでかう割合が8割以上、金利は2%以下が半数近い、など多少調査対象の偏りは出ていると思いますが、昨今の不動産投資のプレイヤーの輪郭をイメージするには十分なアンケート調査結果です。

 また、イールドギャップの言葉の解説なども丁寧に入っていました。イールドギャップからの説明で、昨今不動産投資の利回りは下がっているが、金利がそれ以上に下がっているケースもあり、始めるタイミングとして今は悪くない。と説明をしています。この辺り、稲垣先生は不動産業者のセミナーに出入りしておられ、また消費税還付含めてご自身のビジネスもありますので、不動産投資は止めよう、とは書きにくいお立場ではあると思います。

 そして、1章の中でも特に参考になるのが成功条件3つ。です。
  1.何のために不動産投資するかが明確な人
  2.業者や銀行からどう見られているか知っている人
  3.融資審査の必要書類をすぐに用意できる人
 多少、1.と2.3.の条件としてのレベル感が違う気はしますものの「何のために不動産投資するかが明確」であることが不動産投資に取り組む際に最重要であると信じて疑っていない私としては強く共感をしています。

  第2章は、本書のタイトルにもなっているメインディッシュです。金持ち大家さんと言える5人のサラリーマン大家さんを例にとって、
 ・どのような取り組みをしているか(地方か都心か、一棟か区分か、など)
 ・年間キャッシュフロー
 ・成功のポイント
 ・今後買いたい物件、絶対に買わない物件
 ・稲垣先生が考える注意ポイント
 を1事例5ページ。5事例25ページにわたって紹介をしています。

 本書の最も秀逸な部分です。「今後買いたい物件、絶対に買わない物件」は、第一章でも記載されている通りで、その人の戦略次第であるため、人によって答えが異なりますが、それを良しとして事例を紹介しています。また5事例ともにかなり異なる手法を紹介していますので、それなりにパターン分析に使える事例になっている点も、流石という印象です。読まれる際には、ご自身がどのパターンを目指したいかをイメージしながら読むと良いと思います。

 そして、「ダメ大家」についても言及しています。
  1.買う前にシミュレーションをしない人
  2.買った後、何もしない人
  3.家賃収入を浪費してしまう人
  4.物件コレクターになる人 (選定の目線が低くなる点を指摘)
 としており、耳が痛い人(私もわずかに)もいるのでは。と思います。

 第3章は不動産業者の儲けのしくみと、優秀な不動産業者とそうではない業者を見分ける方法などが記載されています。また、不動産業者にはご自身のゴールを伝えた方が良い、接待するつもりで不動産業者とつきあうくらいの方が良い、と書いてあり、私も同意見です。

 この章の最後は、コンサルタントと付き合うべきだ、と記載されております。不動産業者はポジショントークをする。日本のFPは独立系が少ないため、(税理士を含めて)中立のコンサルと付き合うべきだ、と言っておられます。

 第4章は、金融機関の昨今の情勢と融資に対するスタンスや、金融機関が不動産投資家や物件をどのように評価しているのか、の記述があります。全般分かりやすいのですが、少し面白かったのが「汚い通帳」の説明でした。家賃が入ったらすぐに引き出してしまっていたり、返済日の前日や直前に不足分を入金しているような通帳は「汚い通帳である」と書いてありました。

 第5章は、税理士による著書ですので得意分野です。上手に税金と付き合うために経費の考え方や、比較を添えての法人化の判断基準、などを丁寧に記載してあります。

 この章だけで、「経費計上」「税務調査」「加算税」「減価償却費」「耐用年数」「定額法」「消費税還付」「現物出資」「売却益」「長期譲渡」まで、不動産投資に関わる全般的な税金絡みの知識を一気に身に着けることが出来ます。また、不動産投資専門税理士の見解のため、疑いなく読める安心感もあります。

個人的にはかなり良い一冊だと思いました。20冊以上の書評を作成した後に、再現読むべき5冊を選定しようと思いますが、前提でこの本は5冊の中に入ってきます。

④評価(5段階)
 専門性 ★★★★☆ 専門的知識があり、丁寧に説明してくれます。
 正確性 ★★★★☆ 事実に基づいて書かれており正確です。
 再現性 ★★★★☆ 再現できない部分は少ないように思われます。
 中立性 ★★★☆☆ お立場的な限界は少しだけ感じる部分はありました。
 ズバリ!おすすめ度 ★★★★★ この本は読んだ方が良いと思います。

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2020年3月1日日曜日

物件購入プロセス③:物件情報の中で疑って見るべき箇所とは?

セミナー参加後の販売業者からの紹介物件でも、自分がポータルサイトで探した物件でも共通して、「そのまま記載を信じても良い情報」と「疑って見るべき、そしてご自身で精査すべき情報」があります。

そのまま記載を信じても良い情報は、
・築年数
・土地面積
・構造
・現在の間取り
・現在の賃料
などです。

「疑って見るべき、そして自分で精査すべき情報」は、もう少し詳細に見ていきます。疑って見るべき、とだいぶと悪い言葉を使ってしまいましたが、複数の解釈が可能であったり、将来変化する可能性がある情報のため、精査が必要である情報と捉えて聞いて下さい。

ハイライト部分は念のため精査します ※クリックで拡大

・駅からの徒歩時間

これは区分物件・一棟物件ともに、念のため精査しておけると良いと思います。実際の記載ルールよりもかなり短い時間になっているケースが稀にあります。検証方法としては、GoogleMapやYahoo地図などで実際の距離や道のりを測ったり、自分で歩いてみること、です。特にYahoo地図では、高低差や往路と復路の時間の違いも出せますので、坂道の有無なども知ることが出来ると思います。

※実際のルールは、詳細は省きますが、80mを1分とする、とされています。

高低差を見ると41mとなっています ※クリックで拡大

・想定賃料

既に入居中の場合には、現賃料は間違いないと思いますが、新築の場合には想定賃料通りに決まるかどうか分からないため、ご自身にて賃料相場を精査することが必要です。

SUUMOat homeなどの不動産ポータルで情報を見てみたり、REINSの情報を照会してみたり(賃貸履歴情報照会)、賃貸管理会社にヒアリングをしたり出来ると良いと思います。また、首都圏限定ですが『適正家賃.com』という賃料相場シミュレーターもかなりの精度の高さですので活用できるのでは、と思います。

・近隣施設情報

最寄りのコンビニやスーパーが増えたり減ったりは、それなりに高い確率で変化するものです。特に入居付けの際に重要な、大学や工場、病院の移転なども、ありえない話ではありませんので、要注意です。

対策ですが、入居付けの際に、特定の大学などの施設に依存している物件であれば、購入を控えたり、移転の可能性をネットで調べたりなどしてみると良いと思います。

・眺望

眺望も将来的には変化をしてしまう可能性があります。海やスカイツリーや富士山などの特別な眺望の物件については、眺望が変わっても価値がある物件かどうかを見極めて購入の判断をする必要があります。

・管理費/修繕積立金

これらは、現在の情報としては疑って見る必要はありません。ただ、将来的にどのような計画になっているかは事前把握の上、購入の判断を行って下さい。

資料に書いていない重要な情報については、ヒアリングをするしかないのですが、それらの情報については次回まとめます。

物件購入プロセス
 ①セミナーに参加して物件情報を貰う
 ②物件情報サイトで物件選び
 ③物件情報の中で疑って見るべき箇所とは?
 ④以降も順次、説明してまいります。

※本記事は、2020年3月時点での記事です。 本ブログでは、環境変化に対応するため全記事を定期的に更新しています。

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物件購入プロセス④:聞かないと教えて貰えない、盲点になりがちな物件情報10項目

前回は、物件情報の中にも、そのまま額面通り受け取っても良い情報とそうではない情報があること、また、額面通り受け取ってはいけない情報についてはどのように精査をすることが出来るのか、を記載しました。 物件購入プロセス③:物件情報の中で疑って見るべき箇所とは? セミナー参加後の販...