国税庁のページの中にも、「不動産収入を受け取ったとき(不動産所得)」というページがあります。そこまで固い文章で書かれているものではありませんので、念のため一読いただけると良いと思います。
◆どのような場合に不動産賃貸収入の確定申告が必要になるか?
不動産賃貸収入に限らない話ですが、確定申告が必要になる条件に「各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える」というものがあります。そのため、給与所得や退職所得とは別に不動産賃貸収入やその他の所得が年間20万円を超えたら(20万1円以上)、確定申告が必要です。
確定申告は個人(個人事業主を含む)の納税に関する制度であり、賃貸収入が個人に対して発生している場合には確定申告が必要ですが、賃貸収入が法人(資産管理法人など)に対して発生している場合には確定申告で言われるその他の所得の20万円に合算する必要は必要ありません。
※さらに詳しい確定申告が必要な条件については国税庁による「確定申告が必要な方」をご覧ください。
◆不動産賃貸収入の確定申告をすると、得をするのか?
納税行為ですので、損・得、という言葉遣いには語弊があります。納税も、確定申告も国民の義務ですので、特に選択や検討の余地はありません。確定申告は申告者が得をするための制度ではなく、納税額を実態に合わせて適正にするための制度です。そのため、適正化されるプロセスにおいて得をする(納税した税金の一部が戻ってくる)こともあり、また、損をする(不足している納税額を収める必要が出る)こともあります。
不動産投資が節税に有効だという話を聞いて不動産投資をしている方も多いと思います。不動産賃貸による収支が会計上マイナスであった場合に、損益通算といって、本業の所得から不動産賃貸によるマイナス分を差し引くことが可能なため、節税効果が生まれます。
不動産賃貸が、キャッシュフローとしてはプラス収支になっていても、会計上は所有不動産の価値の低減を支出として計算する経費(減価償却費)が認められており、これによって会計上の収支がマイナスと出来るケースもあります(ワンルーム投資など)。
◆不動産賃貸収入の確定申告の計算方法は?
確定申告の際の申告事項、計算方法はそこまで難しいものではありません。収入と支出を計算し、収入が支出を上回っていた場合、上回っていた金額が不動産賃貸所得となります。
また、個人の不動産賃貸収入の計算は、毎年、1月1日~12月31日までを1サイクルとして計算して申告をします。
・不動産賃貸で「収入」扱いとなるもの
賃料
礼金
更新料
※返還予定の敷金は収入扱いとなりません
共益費(電気代や水道代,清掃代,インターネット代などを含む)
・不動産賃貸で「支出」扱いとなるもの
マンション等の場合、マンション全体の管理費
マンション等の場合、マンション全体の修繕積立金
※修繕積立金については、国税庁の解釈も参照下さい。
管理会社を入れていた場合の、管理会社に支払う管理費用
管理会社に支払った仲介手数料,業務委託費,広告費等
インターネット代や清掃費など負担をしていた場合はその費用
固定資産税(その他の租税公課も含む)
損害保険料
減価償却費
借入金の利息(建物代に対してかかるもの)
賃貸している物件への交通費・宿泊費
販売会社,管理会社,清掃会社等との打合せ費用
◆確定申告にあたって準備が必要なエビデンス
大部分の金額については、銀行口座に記録が残っていたり、管理会社等からの明細書があると思いますので、資料を準備さえすれば問題なく確定申告を進めることが出来ると思います。
エビデンスがなく、手元で計算をしたりなど、ひと手間かける必要があるのは、支出側にある「減価償却費」「借入金の利息」「交通費・宿泊費・打合せ費用」などが代表的なものです。
不動産賃貸収入の確定申告のキホンを説明します |
それぞれ、計算方法について説明致します。
①「減価償却費」の算出方法
賃貸収入を得ている物件の取得金額を、土地分と建物分に分けます。
この際、固定資産税評価額などを按分の根拠にするのが一般的です。
↓
上記のうち、建物の価格について、構造に応じた係数を乗じます。
RC構造では、0.022など、決まった係数が存在します。この0.022ですが、RC建築物の耐用年数の47年と掛け算をすると、1.034とほぼ1となります。
↓
上記計算結果が、減価償却費となります。
具体的な減価償却費の算出を2例紹介致します。
・2400万円で購入した区分ワンルームマンション(RC構造)
固定資産税評価額は、土地が1200万円,建物が600万円(土地2:建物1)
購入金額の2400万円を2:1で按分し、
土地は1600万円,建物は800万円とする。
土地価格は劣化しないため、減価償却費は無し。
建物価格に0.022(RC構造)を乗じた金額が減価償却費となる。
⇒ 800万円 × 0.022 = 減価償却費 17.6万円
・8000万円で購入した中古アパート(木造)
固定資産税評価額は、土地が3000万円,建物が1000万円(土地3:建物1)
購入金額の8000万円を3:1で按分し、
土地は4000万円,建物は1000万円とする。
⇒ 800万円 × 0.022 = 減価償却費 17.6万円
・8000万円で購入した中古アパート(木造)
固定資産税評価額は、土地が3000万円,建物が1000万円(土地3:建物1)
購入金額の8000万円を3:1で按分し、
土地は4000万円,建物は1000万円とする。
土地価格は劣化しないため、減価償却費は無し。
建物価格に0.046(木造)を乗じた金額が減価償却費となる。
⇒ 1000万円 × 0.046 = 減価償却費 46.0万円
⇒ 1000万円 × 0.046 = 減価償却費 46.0万円
RC構造は0.022、重量鉄骨は0.030、木造は0.046を乗じます。
※実際には、居住用以外で異なったり、もっと複雑ですので実際の申告にあたってはよく調べた上で構造別の掛け率(定額法と呼ばれます)を調べてみて下さい。
②「借入金の利息」の算出方法
支出と出来るのは、返済金額が元金充当分と利息支払分がある中で、利息分のみ。また、土地分・建物分がある中で、建物分、とされています。 元金充当分と利息支払分については、返済予定表などを見れば割合が分かります。土地分と建物分については、購入時の土地と建物の金額の割合や、固定資産税評価額の土地の建物の評価額の割合を使います。そこまで大きな差にならないかもしれませんが、私の場合は顧問の税理士さんと相談の上、有利なほうの条件で申告をしています。
③「交通費・宿泊費・打合せ費用」
こちらは計算などのひと手間はかかりませんが、これらの費用が賃貸業のために必要な経費であったことを証明するためのエビデンスが必要です。交通費や宿泊費の場合には、訪問の目的(下見などでも構いません)、また、打合せ費用については、誰と何のための打合せをしたのか、などの情報が必要になりますので、経費を使う場合はこれらの情報を記録しておく癖をつけられると良いと思います。
具体的な確定申告の方法については、私はe-taxでやっておりますので、次回は具体的な不動産賃貸収入の確定申告方法について説明致します。紙で申告する場合の詳細のやり方が
三井住友トラスト不動産さんの「不動産にかかわる確定申告」の中に詳しく記載されていましたので、是非ご覧ください。
※本記事は、2020年2月時点での記事です。 本ブログでは、環境変化に対応するため全記事を定期的に更新しています。
※『不動産投資の取り扱い説明』公式LINEアカウントを開設致しました。よろしければ、「@fudosantoushi」で検索して登録をお願いします。更新情報を送付致します。
↓こちらのボタンからも登録できます。
0 件のコメント:
コメントを投稿